休み時間の度に香帆(カホ)を率いる女子グループが集まってくる。

いつもは、ネチネチと嫌味ったらしい事を並べにくるのに、今日は気持ちが悪い程笑顔を振りまいている。

これはこれで怖いわね

「ねぇ、空野くんって~、どんな子がタイプ~?」

黄色い声で隣にいる彼への質問攻めが始まった。

あ、そっちに集まってきたってわけね?

教科書を机に仕舞い、廊下に出ると、杏ちゃんも付いてきた。

「すごい人集りだったね」

「うん」

「すごく怖そうな人だね?」

さっき転校してきた彼の話題がここでもでるなんて

「見かけわね」

「えっ!? もう仲良しになったの?」

「えっとね――」

杏ちゃんには知っていてもらいたくて、彼が例の幼馴染であった事を打ち明けた。

「へぇ♪ ロマンチックね」

「もう昔の事よ」

「ううん。今でも続いているよ? だから、この間ゴミ箱を漁ってまで一生懸命探していたんでしょ?」

はい、ご名答。

杏ちゃんって、意外にアンテナを張り巡らせるのが得意なんだよね?

でも、それはこの変わり果てた姿を見る前の事だし。

「へぇ、俺の事そんなに想っていてくれたんだぁ」

えぇ!? い、いつから此処にいるのよ!? 

目の前には、さっきまで女子グループに囲まれていたヒカルくんが

「あ、じゃぁごゆっくり」

いや、杏ちゃんどうして行っちゃうの? 一人にしないでよ

「だってよ。俺の事待っていてくれたんだぁ」

ジリ、ジリ、と距離が縮まってくる。

「あ、いや、その」

「そのリボンが何よりの証拠だよなぁ?」

図星だけに答えられないよ。

今の私、まるで蛇に睨まれた蛙だ。

「礼をするよ」

廊下の壁にへたりついた私は身動きが取れず彼の餌食となり、この公衆の面前でキスをされてしまった。

香帆たちの目が怒りマークに変わったのは、言うまでもない。