漸く落ち着きを取り戻した私は、杏ちゃんが勘違いしていた事を告げる事が出来た。

「……甘奈がそれだけ大事に想っているって事は、それだけ素敵な人なんだね」

「うん」

子供心に抱いた恋心を打ち明けたら、心の中がちょっぴりくすぐったいような、温かい感じになれた。

そう、友達のままだけど。

「私も会いたいな、その彼に」

「杏ちゃん、惚れないでよ?」

「ウフ(笑) 親友の恋路を邪魔する程ヤボじゃないわよ」

泣いたり笑ったり忙しいのも青春の1ページなのかもしれないね?

私たちが教室の扉に手をかけたのと同時に、扉が開いた。

そして眉間に沢山のシワを寄せた山吹先生が仁王立ちしていた。

あちゃぁ……

「下校時刻はとっくに過ぎているんだぞ!! 届けを出さずに教室に戻るのは校則違反だ。二人とも――」

「ごめんなさい先生、大切なものを探しておりましたの」

出た。杏ちゃんの必殺上目遣い

「そ、そうか……み、見つかったのか?」

「はい、お陰さまで」

両手を胸の前で握り、尚も上目遣いで微笑みを投げている。

「気をつけて帰るんだぞ」

「ありがとうございます」

先生が先にUターンをし、私たちもゆっくり教室を後にする。

「杏ちゃん、助かったよ」

「先生がお優しくて良かったよね」

や、優しい? 貴女がいなかったら反省文は間違いなしだったのに?

「杏ちゃん……」

もしかして気付いていない? 貴女の瞳の光線は世の男性陣はイチコロなのよ?

そして、例のその彼とは思わぬ形で再開する事となるなんて、この時思う筈もなく。