投げつけた言葉が病院の中に響き渡っている事も気にも止めず、この場から飛び出すように病院を後にした。
なによ、なによ。なによ!!
自分ばかりカッコつけちゃってさ。
私の気持ち受け止めてくれなければ、誰が拾ってくれるというのよ!?
二度もアンタに惚れちゃった私だけがバカみたいじゃない!!
悔しくて、悲しくて、ただただ中庭の銀杏の樹に拳を当て続けていた。
「そんなに樹をいじめたら可哀想だろ?」
フワッと甘い香りに包まれ、叩きつけていた手を阻止された。
肩を上下に大きく揺らしながら。
「もちろんこれからだって甘奈を守るから安心しろ」
心臓に爆弾を抱えているとは思えないくらい、力強く抱かれている。
輝は私の涙が枯れるまでずっと背中を撫でていてくれた。
私たちが寄りかかっている背の高い銀杏の樹が黄緑色の葉をカサカサ音を奏でている。
「帰ろうっか」
「うん」
肩を並べて歩いているのに、すごく遠い存在に思える。
お互いに言葉を掛けることはない。
彼の背中があまりにも小さく見えたから、宙をキッテイル右手に私の左手を重ね
ギュッ
強く握ったら一瞬驚いた顔で、こっちに振り返ったから、ありったけの笑顔を彼に送った。
―― ヒカル、私は貴方に何が起きたってちゃんと受け止めるらね。
だからお願い、私を輝の傍にいさせてね ――
届いたかな? 私の想い。
道の両端に広がる黄金色の景色が飛び込んできた。
沈みかけた西陽を受けた稲穂が風の力で波打っている。
まるで、陸の海だね。
いつも見慣れた景色のはずなのに、今日は彼らに、大自然に応援されているようだね。
明日への道しるべに感じるこの黄金色をしっかり胸に刻む。