私たちは、缶ジュース片手に誰もいない待合室の長椅子に腰掛けるも、暫く黙ったまま。静まり返った病院と、消毒液の匂いがいっそう心を沈ませる。

「バレちまったな」

始めに口を開いたのは、輝だった。

そんな事言わないでよ? 違うって否定してよ!!

「今は、調子いいけど、いつ発作が起きるか解らないのも本当」

「……」

「俺、カッコ悪りぃな」

「そんな事無いよ」

輝は、ヒカルだもん。私の王子様は輝だけだもん。

「別に隠すつもりも無かったけど、こんな形で知らせる事になるとは思わなかったな」

私だって思っていなかったよ。

「甘奈、お前にはちゃんと言っておく。今この状況で直ぐに天国に行くとかはねぇ。」

良かった。

「けどな、身体に負担がかかることが多ければ、もし、大きな発作が起きたりしたら緊急に入院が必要になる。小さな動悸くらいのものなら薬で一時的にしのげる」

「薬?」

「あぁ。此処にいつも常備している」

彼はジャケットの内ボケットに私の手を当てさせた。

「だけど万が一、薬を飲む事が出来なかったり手元に無い場合、救急車を呼んでくれよな」

「い、嫌だよ。天国へ行くお手伝いなんてしたくないよ」

「そう言うなって。こんな事他の奴らになんか頼めないからな。安心しろ、万が一の事だから」

万が一……今はまだ行かないよね?
病気だから、先が長くないから私と付き合いたいとか言ったの?

「別に病気だからって同情はして欲しくねぇ。甘奈がそんな事しないと信じてるから、俺は病気のこととか抜きにして付き合いたいって思ったけど」

「けど?」

「こんな事知ったら重荷だよな? 忘れてくれ」

ずるいよ。
そんな風に言われて、拒否したら私が逃げ出したって思われるじゃないのよ!!

「輝、私を……左横を私の場所に……させて」

スカートの裾をギュッと掴み、俯いたまま伝えた。

「俺は嬉しいけど、辛くなるのは甘奈だよ?」

何よ? 急にしおらしくならないでよ!!
いつもみたいに小悪魔な輝じゃないと調子狂うじゃない!!

「何でもかんでも一人で勝手に決めないでよね! 私を守ってくれるのは輝だけなんだから!!」