「ほら」

それだけ言って、私の前に膝間付いた姿になり、手を背中より出してきた。

お、おんぶも嫌だよ!!

だけど、お尻が痛くて歩けない私は、目の前に差し出された背中に乗る事にした。

悔しいけど、やっぱり

「好き」

彼に身をゆだね小さく小さく呟いた。

――週が明けた月曜日

学校へ付くと見覚えのないサラサラの黒髪に黒渕眼鏡をかけた子が、輝の席に着いている。

「ねえ、あなた転校生? そこ、遅刻魔の席だから別の席用意してもらったほうがいいわよ?」

教科書の準備をしながら、隣の男の子に声をかけてみたが、返事もせず涼しい顔をしている。

それにしても、先生に紹介される前から馴染んでいるなんて、大した奴ね。

ふと、隣を見ると肩が小刻みに揺れているのが目に映った。

「ちょっ……どうしたのよ!?」

「……」

端から見たら私が泣かしているみたいじゃない!!

「な、泣かないでよ、直ぐにクラスにも馴染むわ」

「……クスクス(笑)」

えっ!? 泣いていたんじゃないの?

「もうダメ~。その鈍くささどうにかならない?」

お腹を抑え、必死に笑いを圧し殺しているこの人は、眼鏡を外しニンマリと笑った。

「ヒカル?」

「遅刻魔とは言ってくれるねぇ。フフ(笑) 転校生ね、俺の変装も中々ってわけだ?」

「あぁ、その……この変わりようはどうしたの? 頭、黒だし、眼鏡まで」

「イケてるだろ?」

イケてるというより、真面目人間に早変わりだね。昨日までの近寄りがたいヤンキー姿をしていた同じ人とは思えないよ。

「甘奈は、こういう方が好きだろ?」

そういえば昨日、そんな事口走っていたような。

「決めたんだ。甘奈、お前を守る為に俺は再び変わるってね」

で、この変わりよう?

「あ、ありがとう」

お礼くらい言わなきゃバチ当たるものね。
人生で同じ人を二度好きになるって、ヒカル……ううん、輝とは運命……だったのかな?