先輩は3年の下駄箱にきて足を止めた…


歩くスピードにやっとついていっていた私は,息が上がっていた…


先輩は…


前を見たまま…



「せ…先輩?」



誰もいない暗い昇降口に私の声が響いた…




「…ちゃんと,オレに渡せたな」

先輩は,私に背中を向けたままつぶやいた



「あっ…はい…がんばって…走りました」


「オレが…お前が走る直前…なんて言ったか…わかった?」



「あ…はい…なんとなくは…」


「じゃ…なんて?」


クルッと先輩がこちらを向いた…



先輩の大きな瞳と視線が合う…


「え?…だから…その…『がんばれ』…って…」


なんだか恥ずかしくなって視線を落とした…



「はい!不正解!」


「えっ?!…違うんですか?」


思わず顔をあげた…


「ダメじゃん!伝わってねぇのかよ!」


ちょっぴり微笑んだ先輩…でも…ちょっぴり残念そう…


「じゃ…なんて?」