でも、その直後、雅彦は何故か、浮かない表情を浮かべた。そして言い憎そうに口を開く。
『それとさ…めるちゃん、あの…幸也の事なんだけど…』


『幸也?』

心臓がトクンと跳ねた。 だけど

『雅彦、幸也の事はもういいの…何も言わないで…』
あたしは、そう言って睫毛を伏せる。

雅彦が訊いた。
『美紀から訊いたけど、めるちゃん、文人とかって彼の事好きなのか?』

(文人…)

雅彦の言葉にあたしは、長年付き合ってきた文人と自分の関係を考えた。

考えたけど・・・


『解らないよ・・』

そう答える事しか出来なかった。


『そうか…』

うつ向く雅彦

『まあ・・外野がつべこべ言う事じゃないよな…』

そう言って、立ち上がった。

軽く手をあげて、去って行く雅彦を見つめるあたし…。

自分自身の気持ちが、見えない歯がゆさに、唇を噛み締めていた。