夕食の時間は、今年もやはり憂鬱だった。


みんなが、はしゃいで話している声が、半分ボヤけて遠くの方に聞こえる。


隣で、あたしと同じように黙り込んでいる幸也が、凄く 遠くに感じた。



夕食が終わり、部屋に戻ろうと立ち上がると

『めるちゃん、ちょっといいかな…』

雅彦があたしを呼び止めた。

『先に部屋に帰ってるね』
美紀があたしの肩を叩く

幸也は、一瞬 あたしを見ると、背を向けて レストランを出て行った。


ロビーの椅子に腰を降ろして、テーブルを挟んで向かい合う あたしと雅彦



『めるちゃん、俺…』

雅彦が口を開いた。


『あれから…美紀とも話し合ったりして、俺なりに、めるちゃんに言われた事、良く考えて見た』


『うん…それで?』



『なんつーかさ…俺、頭悪いからさ、やっぱ、良く解らねーんだ』


『好きな人の上手な忘れ方?』



『うん…だから…』



『だから?』



『解らねーから、忘れるの辞めにした……ってか、この先 どうなるか解らねーけど、美紀に釣り合う男になろうと思う』