部活はと言えば、まだまだ引退というわけではない。

これから文化祭があるし、後輩たちへ教えていかなければならない事もある。

新たに配布された楽譜も練習しなければならなかった。

とはいえ、3年生が部活を休むことには少しゆるくなってはいた。

それなのに割とみんなよく来ている。

気晴らしになる、
最後の部活だから、
みんなに置いていかれる、
後輩に教えないといけない
などなど理由はたくさんある。


「過去問問いてみた?」

音楽準備室のソファーで茜とくつろいでいたときである。

志望校が同じ私たちはよくそんな話をしていた。

「うん。難しかった…」

「今回のは少しね。私もちょっと焦った。」

「私歴史が全然わからないんだよね。」

「私も苦手。じゃあ一問一答しない?」

じゃん、とばかりに出した薄い小冊子。

最近みんなが持っている一問一答シリーズである。

「おお!でも本当に分からないんだよな~。歴史やってた2年生の頃は社会覚えるのあきらめてたし。」

「いいから、いいから。」

「問題。イギリス出身で、市民政府二論を書いた人は?」

「…分からない」

「ヒントね。」
と言うと、なにかジェスチャーをしだす。

「それはなんかの踊り?」

「そうそう。でも踊りというより…ほらクラブとかジャスコとかで流れる…」

「ジャスコ?デパート?」

「あ、ちがった。ジャスコじゃなくて…あれ?なんだっけ?」

「?」

答えのわからない私はよけいわからない。

「ほら昔のダンスするところ。ねぇ、」

カラカラと窓ガラスを開け、外にいる後輩に助けを求める。

「…もしかして、ディスコですか?」

「そう!それ!あーすっきりした。ありがとう。」

「で、答えは?」

「ん?あぁ、ロック。」

「…あぁ。って、わかりにくっ!」