課題曲のことは頭に無かったけど。

「自由曲は、どうするですか?」

みんなが真剣な顔で先生を見る。

「ん?自由曲か、そうだな、お前らも今年最後だし、自分で選んでみるか?
何かやりたい曲があるなら、聞くぞ。最終的に決めるのは先生だけど。」

「!」

それを聞いてみんな喜んだ。

「なんだ?もう決めてるのか?」

その様子を見た先生は意外そうに聞いた。


『チェスフォード ポートレイト』

J・スウェアリンジェン 作曲

これが私達がやりたい曲。

それを聞いた先生は

「なんだ。みんな好きだな~、チェスフォード ポートレイト。そんなに面白いか?ま、悪くはないけど。」

 みんな?

「みんなって?」

「その曲、やるところ多いだろ。人気あるんだな。一昨年なんか、5、6校いたんじゃないか?」

 あ、そういえば、なんか聴いたことある曲だったかも。

「聞き飽きた曲だぞ。他のどこもやらない曲がいいんじゃないか?」

他のどこもやらない曲-。

先生のその言葉が今は魅力的に聞こえない。

なぜなら、それで恥ずかしい思いをしてきたからだ。

先生が変な曲を選ばないうちに


「絶対!チェスフォード ポートレイト!」