「3年が引退したから、フルートがいなくなったな。」

顧問は私を見ると、

「楓はフルートに戻ってほしいんだが、大丈夫か?」

「はい。」

みんなとサックスの練習は楽しい。サックス自体も好き。
フルートに戻れば、また一人だ。

 でも私は、フルートがやっぱり性に合ってるな~。

と思う。フルートだって難しいんだけど、他の人がやってるのを見たらきっと、羨ましくなる。はず。


「先生、クラリネットは?」

「あ~、そうだな。とりあえず、戻しておくか。
人数が変わらなければ、またサックスやってもらうことになるが…。」

「え~。」

「あの、トロンボーンは?」

1年生で元フルートだった2人が問う。

「すまん。トロンボーンは吹奏楽になっても重要なんだ。今吹けるのは2人だけだから、そのままやってくれるか?」

「はい。」

 確かにな~。吹ける人がいなくなると面倒だよな。

 本人達が自分の楽器を好きになってくれてればいいんだけど。

「じゃあ1年の元クラリネットの子もそのまま?」

茜が聞く。

「うん。そこだよな~。クラリネットは多い方がいいんだが…。他の楽器もな~。」

しばらく考えた後。

「2人はもう少しそのままで。部員が増え次第、クラリネットに移動してくれ。」

「わかりました。」


こうして、また私はフルートに戻った。

茜と莉奈はクラリネットだ。


とりあえず、香奈恵先輩がやっていたパートを練習していた。

「へー、フルートってこんな所吹いてたんだな。」

ジャズでは花形のサックスを吹いていたため、まったくもって張り合いがない。

本格的なフルート吹きならもっといい具合に目立てるんだろうが。

 私はアマチュア~。

合奏も以前のように面白くない。
はっきり言ってジャズならサックスを吹きたい!

そんなこと思うなんて自分でも意外だった。

 あ、香奈恵先輩もこんな気持ちだったのかな?

みんなに置いていかれたような孤独感。


しかし、ほどなくして一人の一年生部員が入ってきた。