普通、うちの学校は男女関係なく下の名前か、あだ名で呼ぶ。

「田中君はさー」


名字に君付けされて呼ばれているのは彼だけだ。
たぶん、田中君も他の人を名字+君(さん)で呼ぶからだろう。

「何?大城(オオシロ)さん。」

大城は莉奈の名字。

「前、いた学校吹奏楽部強かったんでしょ?なんでうちの部に入ろうと思ったの?しかも即決だったよね?」

確かにここは田中君には物足りないはず。部員でさえ辟易してんだから。

「あーそれはね、騙されたんだよ。」

 え!?

「誰に?」

「登川先生。
まだ部活入るか決めてなかったんだけどさ。」

「うんうん。」

「登川先生が『うちの学校は全国制覇もしたことがある』って言うから。」

 先生、それ何十年前の話だよ!!

「ヤッターと思って来てみたら、こうだったってわけ。」

 それは残念だったね。って、こうってどうだよ!?

相変わらず飄々としている田中。


 だけど、何だろう?空気が変わった…か?

空気を読まないのか、わざとなのか、彼はやんわりしてるようで、直球な所がある。