もちろん、先輩が来たら練習をする。


一回練習場所を勝ってに変えていることについて怒られたが、半数近く辞めたことを受けてか、それ以上何も言わなかった。




ある日珍しく三年生の先輩がたくさん来ていた。


私は…運悪く一人だった。


「楓ちゃん、何練習してるの?」

聡美先輩だ。

「えと、士官候補生です。」

ちゃんとマスターしてなかったし、
香奈恵先輩達が吹いてたのが印象的で、あんな風にかっこよく吹けるようになりたかった。


「士官候補生か…。これ吹奏楽にぴったりだけど、意外と難しいよね~。」

「はい。え?聡美先輩もですか?」

 それこそ意外だ。

「うん。
そうだ!みんなでセッションしようか。」

「え?」

 私、一人なんだけど…


 うわぁお。

集まったのは三年ばかりだ…。


「緊張しないでいいからね。」

「は、い。」

 ま、一人で怒られることはないだろう。
でも早く終わりたい!

「じゃ軽く音合わせ。」

~♪

「う~ん、私低くない?」

「もう一回出してみて。」




「ま、こんなもんで、じゃあ一通り吹くよ。」


聡美先輩がみんなに合図を送ると曲が一斉に行進しだした。


~♪


最初から高い音で元気良く始まるこの曲は休みが少ない、ほとんどノンストップの行進曲。

間違えようがうろたえてるヒマはない。
ひたすら吹くしかない。

甲子園など、スポーツの祭典で流れてきそうな力強い曲だ。


故にカッコイいのだが。


 こんなの行進しながら吹いたらたぶん、倒れる。