ワルツの部分。優雅さが売りで、初めは苦労した。


 昔よりは上手くなってるかな?


吹くだけで精一杯だった自分が、どうやって吹くか、ということまで考えられるようになった。


少し夢中になっていると、梢先輩が来ていたことに気づき、慌てて挨拶した。


「こんにちは!」

「こんにちは。」

梢先輩はなぜか改めて見たとばかりに私を見ている。

「あの?」

 一体何?


「楓、上手くなったね。」

 え?

一瞬褒められたと気づかず、反応が遅れた。


「え?あ、ありがとうございます!!」


 マジ!?梢先輩に褒められた。


梢先輩は楽器が違うため、あまり話したことはないし、3年の中では一番厳しそうな先輩だ。


その先輩に真顔で褒められた。たぶん、お世辞とかじゃない。


私は嬉しくてつい顔がほころんだ。


たった一人のたった一言がこんなにも嬉しく感じたのは、すごく久しぶりな気がする。


それは、私個人の実力を評価してもらえたから。



 真面目に練習してて良かった~。



幸福感に浸りながら、その日一日は過ぎていった。