部長の言葉にポカンとする。



そして、次の瞬間

「なんで吹奏楽祭と同じ曲やんなきゃなんないのよ!!」


ガン!!


足元の戸棚を蹴った。

ただただびっくりする私達を置いて部長は音楽室から出て行った。



あの優しくて冷静な聡美先輩があんなに感情を露わに、というか何かを蹴るなんて…。


「あらら、そうとう怒ってんな~こえ~」

その場の雰囲気を少し和らげたのはパーカスの先輩達。


「どうしよう…、絶対私達のせい、だよね?」

清花先輩達が囁き出す。

「うちらが出来ないから、曲変えようって言われてたのかな?」


 だから最近あんなにピリピリしてたの?


部長を追って行った先輩達が戻ってきた。


「はいはい!さっさと練習に戻る!

言っとくけど、部長が怒るのも当然だよ。あんた達は来年もあるけど、うちらにとっては最後なんだからね!」




 そっか。最後の大会。気合い入ってたんだ。


自分の好きな曲を諦める。


それは結構辛いことなんだと、私が本当に知るのは三年になってから。