愛の問いかけ【恋愛詩集】

「残酷の朝」



わたしは「ねえ」と呼びかける

「ねえ。眠れないんだけど」

隣の部屋であの人は何かをしている

むこうから不躾な光がもれてくる

するとあの人はわたしのそばにきてくれて、そっと抱きしめる

「寝ないの」

あの人は何も答えずに、去る

わたしはふたたび布団を頭の上まで引き上げ、自分ひとりの世界に戻ろうとする

でもまたすぐに戸をひらき

「眠れないんだけど」と言う

するとあの人はまたそっとわたしの横に寝て、わたしが満足するだろうと思い込んでいる時間までそこにいる

「しばらくそこにて」

あの人は何も答えない

布団から手をのばしあの人の手をにぎる

あの人からは何も返らない

「もうあっちにいっていいよ」

わたしの唇が言う

その言葉が発せられると、あの人の中に何かが満ちていくのを感じる

その時の二人は、まったく違う冷たさの中にいる

(ぼくはきみのなんなんだ)

そんな思考らしきものが唯一、不完全な朝の中に発せられそうになる

冷たすぎて、震えることもない