目の前を桜が散っていく。



散るって悲しい感じなのに綺麗なまま散れるってすごいよな。



でも、確か桜って最後は茶色っぽくてそんな綺麗じゃ無かった気がする。


じゃあ最後は綺麗じゃないじゃん。



あ、そっかだから……。



「さくらが良かったな」



囁くような小さな声を俺は聞き逃さなかった。



「何が?」



「あっ、聞こえちゃった?」



慌てた様子で「ごめん」と謝る。



そのごめんが何に対するものか俺には全く分からなかった。



だけど、彼女がそれ以上喋ろうとしないから俺も聞き返せなくて同じ桜を見上げた。