「しょーがないなー、そこまで無視するんなら強引な手使っちゃうよ?」



何が強引な手だ、今も充分強引じゃないか。


そう思いながら人混みの中を抜け、ちょっとした広場に出た瞬間。

押見の手が私の腕を強く引っ張り。



「……っ!?」



恐ろしいほど手際よく、キスされた。


それは一瞬のことだったけど、離れた奴の顔はにっこり笑顔。



「あんた、馬鹿?」

「よーやく口きいてくれた」



すぐさま手を振りほどいて言っても悪びれた様子は皆無。


それどころか「へへーキスしちゃったー」なんて言いながら喜んでやがる。


もうなんか、あまりのしつこさにうんざりしてきた。



「喋って満足なら解放してくれない? 生憎あなたと一緒にいるほど」

「お腹空かない? せっかくだしラーメン食べに行こうよー」

「くっ……」


ひとが喋ってるの無視して話を進めるな!


しかもさりげなくまた私の手を握ってるし。



抵抗の意を見せ、手を振り払ったものの押見の顔から笑顔は消えない。