before kiss, after kiss[短篇]

***

湯気が音を立てて回る換気扇に吸い込まれていく。

入浴剤も何もない浴槽で、後ろから抱きしめられて。



「頭洗う気なかったのに」

「どーせ汗で気持ち悪くなったってー」

「……アンタが変態だからでしょ」

「否定はしないかなー」


右肩の上に乗ってくる顎、ふわり、金色の髪からシャンプーが香る。


顔を逸らせば、曇った鏡。

その隣のシャワーヘッドには、濡れに濡れた白いシャツとジーンズ。



「やっぱり鏡は曇り止め必要だね」

「勝手に言ってなさい」


全てにまともな相手をしていたら、すぐに疲れてくる。

その代わり、彼の口からはいつもちっちゃな小言が漏れるのだけれど。



ぎゅうっと、腕の力が強まった。


「やっぱりそーゆーところも大好きー」


やっぱりって何よ、と言う前に首筋に噛みつかれる。


「アンタねぇ」

「俺のものの印、大事だからつけとくの」


軽く伝わった痛みに眉をひそめながら視線をやれば、無邪気な顔。


ついこの間までは、びくびくしてたくせに。