「……そのかいちょーってのやめなさいよ」
次に目に入ったのは光を浴びて輝いた金髪。
私の言葉を理解できなかったのか、歩きながら首を捻っている。
だけど何か気付いたのか、前を見たまま視線だけこちらに流してきた。
「その代わり、アンタのその眉の傷、理由を教えなさい」
昨日教えてくれなかった、その傷。
私がちょっと見ただけで気づくぐらいなんだから、きっと結構デリケートなものなんでしょう?
それぐらい言えるなら、考えてあげてもいい。
嘘をつかずに私なんかに言えるなら。
あくまで「考えてあげる」だけだけど。
「名前ってみょーじ? 下の名前?」
「別にお好きな方でどうぞ」
ひとから何かを奪っていくのなら、代わりに何か置いていって。
私にも奪わせて。
「じゃーねー……」
アンタは、充分盗ったでしょ。
「やっぱり――」
揺れていた手を掴んで、足を止めて。
私はその唇に、噛みついた。
end.