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結局何度断っても言うことを聞かない押見に近所まで送られてしまい。


調子が狂い過ぎて疲れたのか、化粧だけ落としてベッドに突っ伏してしまった。



おかげで目が覚めてからシャワーを浴びて、いつもより遅い時間。


中途半端に濡れた髪のまま、鞄を持って家を飛び出た。



雀の鳴き声が響く、通学路。


会社に向かうよれたサラリーマンや、まだ眠たそうなOLとすれ違いながら住宅街を歩く。


車通りの少ない交差点を曲がろうとしたところ。



その角に、金色の髪の男を見つけてしまった。



「かいちょーおそーい。あとちょっと遅かったら遅刻だよー」



間延びした声、へらへらと笑う顔。


昨日散々手を焼いた、押見。



「……なんでここに」

「だって一緒に登校したら遅刻しないかなーって」



確かに遅刻しなければ、とは言った。



だが「一緒に行く」とは言っていない。