「ね、かいちょー。まずはどうしたらいいと思う?」
その手を振りほどきたくても、腕が動かない。
「とことん馬鹿なの? 聞いてどうするのよ」
なのに口はなんてことなく動く。
「だって俺はいつでも直球勝負派だから」
学校では、けしてこんな風に喋らないのに。
「自分で考えなさいよ」
見つかってしまったときから、全ての調子が狂わされ。
「えー、ヒントちょーだーい」
逃げ出すことが、出来なくなっている。
だだをこねる子どものように。
不器用に、それでも一途におねだりを繰り返す。
私は母親じゃない。
ただの、女。
「……明日、遅刻しなかったらね」
情にほだされることだってある。
ついぽろっと零してしまったようなひとことなのに。
押見の顔がもう暗くなったのにぱあっと明るくなったように見えて。
心にちりりと何かが走る。
「じゃー約束ね!」
まるで餌をもらった子犬のように、喜々とした笑顔と声の押見は。
握った私の手をゆっくりと握りなおして、指をからめた。



