before kiss, after kiss[短篇]

 
だけど、押見は。



急に私の前に立って、すばやくかがんで。


あっさりと、私の唇をついばんでゆく。



「……あんたね」

「俺、今すんごいかいちょーとセックスしたい」



話を聞いていたのか。


というか何故この流れでそういう意見に辿り着く。



私より頭一つ分高いところにある目を睨んでやる。


だいぶ灯りの無くなって行く世界、金色の髪の下で顔が柔らかく歪む。



「だけど、きっとかいちょーはしてくれないから」



当たり前だ、誰がいつ頷いた。



「いつか、口説き落としてみせる、ってゆー宣言のキス」

「はあ? 何勝手に……」

「言ってからキスしよーとしてもきっとさせてもらえないもん。じゃー事後報告の方がいいじゃん?」



いいじゃん、ってそんなところばかり頭を使わないで欲しい。


それにどれだけキス魔なんだ、コイツは。



そう思うものの、しっかり握られた手が温かかった。



馬鹿みたい、私。