before kiss, after kiss[短篇]

 
「そんなんだからでしょ」

「んー?」



溜め息をつくのも忘れて、反射的に声が出る。



「誰でもいいや、なんて思ってるからでしょ。もうちょっと満たされる相手でも探したら?」

「えー、じゃーかいちょー相手して……」

「アホか。今『誰でもいい』とか言った奴の相手を何で出来るのよ」



即座に否定してやると、押見の顔がきょとんと止まる。


その表情は初めてで、こちらまで一瞬思考が停止する。



「なによ」


そのあと急ににっこり笑ったものだから、つい眉を寄せてしまう。



「ううん、大概の女の子ってついて来るのに、新鮮だなーって」



ところが返ってきた言葉がそれ。


もう呆れて溜め息すら出ない。



「ほいほいついてくる女なんかに快楽を求めるのが間違ってるんじゃないの?」



その場限りで、とりあえず的なノリで。


そんなんでセックスするから、後に侘しい思いをするのだ。



経験したことがあるから。


ちょっと憧れてた先輩に誘われて。


でもその人にとってはただの気まぐれで。



下手にセックスなんかするから、心に穴が空く。