「おや、お嬢さん」
「おじさん誰?」
「何時もあの彼と楽しそうにしているのをよく見かけてね」


隣に座っていた中年位の男の人が、キルシュに話しかけました。

どうやらキルシュとハルトが会っている所をよく目撃していたようでした。

それをまさか誰かに見られていたなんて思ってもいなかったキルシュは、

顔を真っ赤に染めました。男性の肩を叩きたかったのですが、

恐らく骨を折ってしまい兼ねないと思いそれを堪えました。


「や、やだなあ……もう……」
「本当に幸せそうなのに、お気の毒だ……」
「え…………?」


照れるキルシュに男性はその表情を暗くしました。

それがどういう意味なのか。この時までは彼女は知る由もありませんでした。