狐と兎

翌朝。太陽の光が全てを包み込む、爽やかな始まりでした。

そんな爽やかさとは裏腹に、興奮して眠れなかったキルシュはやや寝不足でした。

大きな欠伸を1つして見せれば、シューテに“みっともない”と叱られる始末。

オルヒデが診察を始める時間までお粥を温めたりして適当に時間を潰し、

時計の針が診察の開始時間になったその瞬間にキルシュは小さな土鍋を持って、

お面を被り真っ先にハルトの待つ診療所へと向かいました。

1分でも1秒でも早く会いたいという気持ちが、彼女の走るスピードを加速しました。

まるでそれは周囲の人達からすれば突風のようでした。


「おはよーございますっ!」


診療所に着き、息を切らす事もなく入ってすぐに待合室にいた人達に大きな挨拶をしましたが、

その場にいた3人全員が人差し指を口元に当てていました。