薄っぺらな皮膜のしたに虚があり、それを剥がしたとしてもまた虚からなるものが薄暗い影のなかを重たくのしかかるものがあるように感じていた。

俺は胸のなかと頭に虚の染みをつけたまま、夢も希望も絶望もない学生時代をただ淡々と過ごした。
高校時代は何もなく過ぎ去ったように、ただ3年という時間を消化していっただけだったと思っている。
おそらく何かがあったのだろう。
ただ俺が気に止めてないだけで実際にはもっと誰かに話せるだけの思い出があるのだろうが、無気力、無関心のまま高校生の多感な時代をやり過ごした。

俺は自分では何も価値を見い出すことができない人間だった。

それから高校いや、3年と言う時間を卒業後、故郷から逃げ出すように上京した。
大学へ進学し、在学中にアルバイトをしていた会社の部長に気に入られ、卒業後にそのまま就職した。

俺は仕事を介しての人間関係が得意なのを自覚したのはそのときだった。

プライベートではまったく人の気持ちなど分からぬ俺が、社会という規則ただしく逸脱のない社会で使われる社交辞令の関係は得意だった。

他人と自分の一線を引き、堅固な境界を築き、大人らしく社会のなかで作られた関係が性に合った。

それも社会こそが、虚というものを孕んでいるような気がしていたからだ。

俺は真面目に平行線を走るように与えられた仕事と望まれた仕事、期待された仕事を程度を繕ってこなした。

他人は俺のことを、腹黒いなどと影で中傷をされはしたが、俺にはそうやって生きて行くしか方法がないことをよく自覚していた。