足元には青き草原。
その草原を囲うように機械が整列し、時計のような計器が無数に並んでいた。

草原のうえには丸い球体がいくつも転がり、そのうちのひとつが俺のうしろから迫り、俺は気付かずにぶっかって前のめりに倒れた。

運転手がそれをみて笑った。
俺は起き上がり、手をはたきながら運転手に「ここは何処だ」とたずねた。

「ここは隠れたひとたちの棲む場所だよ、僕達は時空の狭間にいるんだよ。時空と言ってもここはある程度、時空が具現化された世界だけどね。」

「具現化?」

「そうだよ!」

運転手とは違う別の声が聞こえた。
それは聞いたことのある声だ。
肩を叩かれ、振り向くと誰もいない。
「ここだよ」と声のする正面を向くとちらりとモアレの男が目の前にいた。
その瞬間にまるで綿毛のように、俺は宙に舞っていた。
俺はモアレの男から握りこぶしを顔面にもらっていた。

「素直に何も考えずに降りてきなよ、余計なことを考えるとひっかかって降りてこられないぞ。」

確かに落下しない。浮いているのではなくカラダを押さえられていた。
まるで宙に見えない地面があるように!

「降ろせよ」と宙に挟まれたように固定された俺はもがきながら言った。

「きっかけを使えば思い通りさ。きっかけを使えよ。」モアレの男は言った。

「ばぁか!もうお前の挑発には乗らない!まぁ、お前から現れるだろうとは思っていなかったけどな!運転手の男女といい、お前といい俺に付きまとう理由があるのだろう。このまま俺の一生涯をかけてこの空に捕われたまま餓死することが考えられるか?そうじゃない、お前たちにとって俺の力には価値がありそうだ。俺はお前たちが俺を解放するときをゆっくり待つだろう。明日が通り過ぎる時間までな。」

俺は大見栄をきっていい放った。