僕は何気に自分の小指を掴んで関節とは逆の向きに力を込めた。
瞬間的に痛みがくるまえにタクシーが停止した。

「おぉ、大胆。でも、なんでブレーキを掛けるきっかけが分かったの?」

「なんてことないだろう。ありえないことで結び付けただけさ。まず、自分で指を折ることは考えない。その代償としてタクシーを止めたのさ。俺がありえないことと代償。それがきっかけを発動させる鍵だろ?」

運転手は平然としてバックミラー越しに後部座席の俺を見ていた。

「お前たちのほうがきっかけについては知識もあるだろっ、何とか言えよ。」

俺はムキになって問い詰めた。
運転手は「きっかけ」について、決められた回数だけのきっかけが自分たちに与えられていることを話し、さらにきっかけを導きつくれるのは俺だけだということを告白した。

「お前たちにとっての「きっかけ」はなんなんだよ。それががほしくて俺をつきまっとっていたんだろ?」

運転手はタクシーを降りた。
それにしたがって俺もタクシーを降りたが、そこは見知らぬ土地だった。
街並みはなく異様な風景が広がっていた。
大地を覆う空はなく筒のようなトンネルのなかのようだった。