シャーンという、水晶の割れる軽い音が部屋中に響きわたる。


空中で支えを失った少女の身体はキラキラと光る水晶の破片と共に落下した。


すぐさまユウが駆けつけ、フィリシアの身体を起こした。


意識は戻っていないが、その身体に力が入ったことがフィリシアを抱きかかえるようにして支えていたユウにはわかった。


そして、ゆっくりと瞳が開く。

――――…


その深い紫闇の瞳はまっすぐゼオに向けられた。


フィリシアは視線をはずさないまま、すっと立ち上がった。


ゼオは何も言わずにその光景を見ている。


フィリシアはぽつりと、言葉を発した。


「あなたは…闇族の長?」


ずっと眠っていたにしては、はっきりとした声である。


ゼオはやはり何も言わずに、にっと笑って見せただけであった。


フィリシアはうつむいた。