「情報を得ること、どうして…どうして、わざわざヒトを創る必要があるのですか?

闇族ならば、誰でも良かったのではないんですか?」


フィリシアは自分の言ったことに酷い嫌悪を抱きつつも、レガートに尋ねた。


「便利だからだよ。」


「え?」


「わざわざヒトを創るのは、便利だからだ。自分で創ったヒトは、自分の意思で消すことができる。

出来てしまうんだ。

それに、もしも創った者が使命を果たせなかった場合、消滅するように創造の段階で呪詛のように染み込ませることも出来る。

だから、創られたヒトは無意識にも消滅しないように自分の使命のために意思を働かせるのだ。」


―――――創られた者だって…生きていたいから。


「意思が働く…」


フィリシアはポツリとレガートの言葉を繰り返す。


誰にだって意思はある。


何が自分の意思で、何が使命のための意思なのか…ミシャは2つの意思の狭間で苦しんでいたのだろう…ずっと。


「同じ…ヒトなのに。」


フィリシアは、レガートがいつしか言っていた言葉を思い出し口にした。


そしてふと、俯いていた顔を上げるとフィリシアは思わずビクリと身体を震わせてしまった。

レガートの、霧のような灰色の瞳がフィリシアを見据えていたからだ。


何度もその瞳と向き合ってきたはずなのに、何故だか初めて見た気がしてしまうほど、フィリシアの中の何かがレガートを恐れているようだった。


――――どうしてだろう。


何かを…知っているの?レガート様…。


――――どうして…私は何を恐れているのだろう。


――――何かを、知りたくて…知りたくない…。


これは…、この感覚は…、


【恐怖】


――――何が?