蒼い太陽

ミシャの闇の気配は、いまだに消え去ってはいない。


予測どおり、崩れた瓦礫の山からミシャはなんとか立ち上がった。


全身を強打したためズキン、ズキンとした鈍い痛みと瓦礫によって切った鋭い痛みの両方がミシャを襲っているようだった。

誰から見てもミシャの姿は痛々しく傷ついており、もう戦いは無理なのではないかと思える程だった。


フラリとよろめく身体を何とか倒れないように持ちこたえるとミシャはまるで全身の痛みを振り払うかのように、ぶんっと剣を一振りした。


そして、ギュッと剣の柄をキツく握り締めながらフィリシアに向かって走り出した。


フィリシアは一瞬驚いた顔をしたかと思えば次に悲しそうにミシャを見つめ、そしてすっと瞼を閉じた。


フィリシアが集中を高めていく毎に全身の魔力も徐々に高まっていく。


やがてフィリシアの周りの空気が不規則に震え始めた。それはまるでフィリシアの魔力に畏れをなしているようにも見えた。

そんな空気の中、フィリシアの身体を銀色のオーラが優しく包み込んだ。


フィリシアはさらに集中し魔力を高めていく。


フィリシアの辺り一体が銀色に包まれると、ミシャはその強大な魔力に思わず怯んだ。


ゾクゾクと背中から全身に巡る恐怖にも似た感覚が、ミシャの足をフィリシアの直前で止めた。


「…っ」


言葉に出来ない程、フィリシアの魔力は凄まじいのだ。


冷や汗が出ることを感じながら、立ちすくみ呆然とフィリシアを見つめていた。


それは後ろのアヤト達も同じで、フィリシアの魔力を恐ろしいと感じてしまう程だった。