蒼い太陽

「お父様!」


後ろでダリアが叫ぶ声がした。

ミシャとフィリシアがはっと、後方を見ると皆は中庭の中央にある湖の近くで一塊になり、ユウの魔法で創られた防護壁に守られていた。


その中でレガートが苦しそうに顔をしかめてうずくまっているのが見える。


レガートの魔力を総動員して維持している城がミシャの魔法によって傷つけられているためだろう。


「レガート様!」


フィリシアが叫んだ。


「かまうな!戦いなさいフィリシア!」


やっと声を絞り出したような、かすれた声でレガートが叫び返した。


「…っ―――!!」


レガートに気を取られていたフィリシアにミシャは容赦なく攻撃を開始した。


上から振ってきた剣先をギリギリのところで交わし、くるりと身体を回転させて次に横から斬りかかってきた剣先も避けた。

フィリシアはぐっと拳を握り銀色の風を起こすと、それをミシャ目掛けて放った。


ミシャは剣で難なく受け止めるが、脇に反れた月の魔力を十分に含んだ銀色の風はミシャをそのまま包み込みミシャを斬りつけた。


ミシャの服はズタズタに引き裂かれ、頬や腕、足などから血を流していたがミシャはそれに構うことなくさらにフィリシアへと向かって来る。


そんな二人の止まない戦いを後ろから傍観しているだけだったアヤトは見ているだけなど我慢ならず、防護壁を飛び出して戦いを辞めさせようとしたが、それをリリが鋭く制止した。


「何故ですリリ様!!」


アヤトがリリに訴えた。


「良いのです。これはミシャとフィリシアの戦い…手出しは無用です。」


普段は優しく温厚な一族である星族の長、それが今は厳しく威厳漂う雰囲気を纏い二人の戦いを見守っていた。


「フィリシア、あんなに魔法を使っているわ。大丈夫なのかしら?」


ダリアは手のひらが白くなってしまう程にギュッと手を握り締め、心配していた。