蒼い太陽

フィリシアが口を開きかけた途端、ミシャはフィリシアへと駆け出し、同時に手のひらに黒い雷を集めた。


それはやがて長細く鋭い剣へと姿を変えた。


バチバチと鋭い雷を纏う漆黒の闇の色をした剣だ。


前にも一度、フィリシアはミシャと戦ったことがある。


その時にミシャが使用していた太陽族の力が込められた白い剣とは異なり、闇に染まる見ただけでどこかぞっとする剣だった。


フィリシアの前までくるとミシャは剣を横に斬り裂くように振った。


フィリシアは後ろに下がりながらそれをひらりとかわす。


ミシャの剣は勢いを増し攻撃してくるのでフィリシアは右へ左へと身体を動かし剣をかわしていった。


自分の攻撃を難なくかわしていくフィリシアに苛立ったのか、チッと小さく舌打ちをするとミシャは剣に雷を蓄え、大きく振りかざした。


それと同時に剣からは黒い雷が飛び出し、フィリシア目掛けて襲いかかってきた。


絵画の間で、一瞬にして大勢の剣士達の命を奪った、あの雷だ。


地面を大きくえぐり、瓦礫を巻き込みながらガラガラと大きな音とともにフィリシアへ向かってくる。


フィリシアは魔力を集中させ、両手に風を起こしそれを防ごうとした。


ミシャの放った雷の威力は凄まじく、風で受け止めていたフィリシアの足がぐぐっと地面を削った。


自分のギリギリの所まで雷を引き寄せ、腕をぐいっと横に振ると雷は瓦礫ごと吹き飛んでいった。


「っはあっ、…はぁ…っ」


レガートには止められたものの、魔法を使うことに抵抗は無かった。


むしろ何故か、今この時のために月水晶を譲ったのではないかとさえフィリシアには思えた。

それがどこからくる確証なのかはわからないが、フィリシアに迷いは無かった。


現に、レガートは何も言ってこない…。