奥の部屋にある絵画はどれも色鮮やかだった。


「あ、これレガート様だよね?」


フィリシアは一枚の絵画を指してダリアに尋ねた。


「ふふ、そうよ〜。」


ダリアは自慢気に微笑む。


「幸せそうに笑ってるね。」


レガートは他のどの絵よりも優しそうな雰囲気を感じさせるものだった。


見ている方まで、優しさに包まれるような錯覚に陥ってしまう。


「これだ、フィリシア、月族の族長だよ。」


後ろにいたユウがフィリシアに呼びかけた。


「――――!!」


どくんっと、フィリシアの心臓が跳ねた。


ユウに呼ばれ振り向いた視線の先にある絵画に、フィリシアの目は釘付けになった。


長い、銀色のウェーブのかかった髪…。


「このヒトだ…。」


呆然と、フィリシアは呟いた。顔は初めて見る。


それでも、あの夢の女性はこのヒトに間違いないと、フィリシアにはわかった。


絵画の女性は泣いてはいないが、どこか悲しそうな顔をしている。


「何か…悲しそうな顔をしているわね。」


横で絵画を眺めていたダリアも同じ感想を持ったらしい。


ダリアまで悲しそうな顔をして絵画を見つめていた。


「このヒトの瞳も紫なのね。フィリシアと一緒。」


ダリアが自分の瞳を指差して言った。


「本当だ…紫だ。」


「月族の特徴なのかな?」


「でも、おばあちゃんは茶色い瞳をしていたよ?」


「俺も一族によって瞳の色が固定されるなんて話は聞いたことないけど…なんかなんとなく、このヒトってフィリシアに似てないか?」


絵画を見つめながらユウがそう言う。