「花柳さぁ~ん」


…げ。


仕事の後ミーティングを終え、こっそり帰ろうとしていると…背中から甘ったるい声が聞こえてくる。


ヤバイ。あいつに見つかったら最後。


上着を手に、裏口から慌てて逃げようとしているオレを舞が一喝した。


「こら~ぁ!逃がしませんよっ?」


多少眉を寄せ、ツカツカとオレの元に歩いて来る。


華奢だけど、童顔で丸顔だから、怒っていてもあんまり迫力がない。その顔を、精一杯しかめている。


「舞、頼むから見逃してくれ。今日だけ…」


「ヤ!です。っていうか、花柳さんを逃したら私がオーナーに叱られますからぁ」


オレの腕を掴み、グイッと引っ張る。