「だからね、黒谷くんの事情を知った時……何かできないかって思ったのよ。

幸い今の私にはそういう力もあるし、きっとこのために亜沙美は彼と知り合ったんじゃないかって……」


「私……さっき黒谷くんと会いました。

今まですごくやんちゃな子だったのに……いい意味で、本当に別人でした。

今は、お父さんのために……頑張って働いてるって。

亜沙美ちゃんに、すごく感謝してましたよ。

転院が決まった時には、家族で泣いた……って」


「そう……。それなら良かった。私もね、このことで少し自分の中で整理がついたの。

ずっと父に嫌われて、もう二度と島へは戻るなって言われてた。

だけど、父までも失ってからじゃ……遅いんだって。

だから、思いきって会いに行こうと思うの」


「それは、亜沙美ちゃんの挙式で……ですよね?」


何だか口にしてしまうといけないような気がして、恐る恐るそう言うと、彼女は私を見て、微笑んだ。


「そうね。亜沙美の晴れ舞台に、まさか父も拒否するわけにもいかないだろうから。

それとね……。

みうさんには、ひとつお願いがあるんだけど……」