亜沙美ちゃんのいかがわしいバイトのことで、優羽吾くんは、何で気づかなかったんだって、お母さんとケンカになったって言ってた。


ふたりのお母さんは、いつも、ふたりのために必死。


それなのに、当のふたりは、そんなことに全く気付いてないんだ。









――カチャ


すっかり冷めてしまったコーヒーカップを、テーブルに置く。


亜沙美ちゃんのお母さんと、会話すること小1時間。


聞きにくかったけど、思い切って聞いてみた。


やっぱり……黒谷くんのお父さんの病院の手配は、目の前の彼女のしたことだった。


そして、亜沙美ちゃんは、そのことを知らない。


「恐ろしいわよね。まさか亜沙美が、人様からお金を騙し取るような、バカなことに手を染めてるなんて。全く気付かなかったわ。母親失格ね……」


少しぎこちない笑みを浮かべ、彼女は小さくため息をついた。


「亜沙美ちゃん……寂しかったんだと思います。愛斗くんはあんなだし、優羽吾くんもあんまり連絡なかったみたいだし……」