あぁ…あの時の事、


覚えてくれてたんだ。


あの時の挑発的な目を思い出すと、ゾクッと背筋が寒くなった。


「今さ、工事現場で働いてんの。真面目にやってるし、学校行くよりよっぽどマトモんなったぜ、オレ」


「え…そうなんだ。働いてるの?」


ただブラブラしてるわけじゃないんだと思うと、少しホッとしつつも…学校辞めて働いた経緯を知りたくなってくる。


「そ。親父がねー、転院して、金必要になってさ」


「…転院?お父さん…入院してたんだ」


「そ。オレの稼ぎじゃ全然足んねーケド、家族で合わせりゃ結構なモンなんだぜ?亜沙美や先生は、お嬢だからこーいう苦労わかんねーだろうな」


そう言って黒谷くんは、笑みを浮かべる。だけど…今までみたいな、含み笑いじゃなく、素直な笑顔に見えた。