バサッと床に落ちる髪の毛を、目で追う。


だって…


今生の別れと同じだよ。


愛斗以外…好きになれる気がしない。ましてや、はっちゃんなんて。


いざという時に頼りにならないし、すぐ逃げ腰になるし、いつも私の言いなり。


全く愛斗と逆だし…。


「亜沙美の髪、また切らせてくれんの?」


「…え?」


思わずまた振り向いた私に、愛斗はハサミを下げる。


「また…通うだろ?この店。いつでも切ってやるよ。こんなクセある髪、オレしか手におえねぇって」


本当に?


また…切ってくれるの?


今までみたいに、私の瞳に飛び込んできたのは


愛斗の…最高の笑顔だった。


もう、それだけで十分だよ。


愛斗と普通に話ができて、笑いかけてくれる。


それだけで…


幸せだから。