「愛斗っ!ま~たこんな所に荷物置きっぱなしで」


「は?オレじゃねーし。ハチじゃねぇの?」


「ガタガタ言ってないで、見つけた人間が片付ける!」


通路の向こうで、オーナーとやり合っている愛斗が見えた。


さっきその荷物置いてどこかに行ってしまったのは、確かにはっちゃんだ。


たまたま通りかかった愛斗…不憫だよねぇ。


結局負けた愛斗が、それを片付けていた。


私と廊下ですれ違う愛斗。私がじっと見ていても、フッと目を逸らした。


…ずっと、そう。


ここで働くようになってから、愛斗はマトモに私と目を合わせてくれないんだ。


寂しい…けど、自分で招いた事態だししょうがない。これからはもう、愛斗に無理に好きだって迫らないんだ。


それに…


私はもうはっちゃんと無理やり結婚させられるし。


今更どうあがいたって、お母さんの決断は覆らないんだ。


それならせめて、しばらくそばにいれる事を…幸せな事と思いたい。