お母さんの言う…


後継者は、はっちゃんだったんだ。


騙された。お母さんはこういう人。私に選択肢があるなんて言っておきながら、何の選択肢も与えてくれない。


帰りの車の中で、黙っている私を心配そうに見ているはっちゃん。


はっちゃんと結婚?


ありえないよ…。


はっちゃんは先輩だし仲いいけど、私からしたら扱いやすいだけで何の恋愛感情もわかない。


はっちゃんだって…そうだろうし。


なのに。


「亜沙美…。オレ、頑張るから」


なんて、何でそんなにいい加減なの?


あの人の…お腹の子供はどうするの?はっちゃん、お父さんになる決心ついてきたんじゃないの?


「亜沙美、明日からはっちゃんは愛斗の店でお手伝いよ」


運転しながら、お母さんが後部座席の私たちにそう言った。


「タダって言ってたけど…ホントなの?」


「もちろん、うちからお給料は出すわよ。はっちゃんには愛斗のお母さんの元でしっかり働いて、その曲がった根性叩きなおしてもらわなくちゃ。

亜沙美と結婚して、将来うちを継いでもらうんだからね」


「何言ってんの?はっちゃんにそんな事、できるわけないっ」