「花柳さん、お電話です」


フロントからスタッフが駆け寄って来て、オレにこっそり耳打ちする。


オレはカットしてる途中の手を止め、軽く挨拶した後、客の側を離れた。


電話って相手は?


スタッフに聞いても、首を傾げてる。


オマエら仕事しろよ…。


スタッフルームに入り、点滅している外線ボタンを押した。


「お電話代わりました。花柳です」


ガラでもないが一応店では、電話を取り次がれた時はそう言う事になっている。


『…花柳?』


「はい。花柳です」


『………』


人を呼んどいて、何だこのクソ野郎。


そう言いそうになる気持ちを抑え、にこやかに…口端を上げつつもう一度。