「朱兎…私のこの状況、楽しんでない?しかも、そんな前から見てたんなら早く助けてよ!」


私がそう言うと、朱兎は笑みを含んだ表情を崩さず、私の肩に手を置く。


「もし早く助けてたら、アイツの代わりにオレとココでヤってくれた?」


「朱兎となら、どこでもいーよ」


私の肩に置いた朱兎の手に、片手でそっと触れた。…でも朱兎は私に触れる事なく、肩に置いた手を離す。


「悪党もいなくなったし今のうちに煙草吸ってくる?ニコチン不足で逆ギレされたらたまんねぇ」


「あっそ。じゃ、さっさと帰れば?」


「また襲われたらどーすんの?」


「朱兎がまた来てくれる」


「ハハ、どーだか」


朱兎は、体育館の床についた靴の泥をじっと見つめる。


「ヤベ。土足厳禁じゃん、ココ」


「今更何なのよ。それ以上の事やったくせに…。朱兎は、変な所気にしーだよね」