修二さんが助かった…良かった、良かったよ。

「もう大丈夫なんですね?」

「えぇ…まだ寝たきりですけど…気はかなり元気に戻ってますよ」

「良かった…」

「じゃそうゆう事で、近い内、こちらの方に」

「…分かりました」

電話を切った。

何が、何が分かりました?

また会いに行くつもりなの?

月子、もう修二への思いは断ち切る筈ではなかったの?

会ってどうするの?

月子の気持ちは…再び揺らぎ始めた。

今すぐでも病院に走りたい。

でも走っちゃいけないのよ!

何があっても走らないって決めたじゃない!

月子は兄の家に帰った。

夕ご飯は鍋料理…湯気の向こうから、兄が話しかけてきた。

「部屋はどうだ?いい所見つかったか?」

「まだ、何処がいいか場所もなかなか決まらなくて…明日、また出かけるわ」

月子の胸中は、もう部屋どころではなかった。

修二さん、命…助かって良かった、大事に至らなくて良かった。

会いたい…会いたいわ。

駄目よ!原田は?原田の死の意味はどうなんの?

兄の気持ちはどうすんの?

鍋より暖かい家族に囲まれながら……月子の心中は…剣を持ち葛藤していた。