兄は続けた。

「原田さんと別れたいと言うのも、あの男のせいなんだな?そうだな、龍子? 」

月子には返す言葉がない、その通りだから……。

「ヤクザの女になるくらいならな、原田さんの2号の方がまだましだよ。せめて、命の危険だけでも助かるよ!」

兄の核心は、石よりも硬かった。

兄と妹は、何処まで行けど平行線上で泣き合った。


この世でたった一人の肉親……お兄ちゃんにわかって貰えなかった。

当然と言えば当然…肉親だからこそ、わからないのよね。

お兄ちゃんの意見はもっともで、理解ない訳でも頑な訳でもない。

立場が逆だったら、私も必ず同じ事言ってたに違いない。

私の味方は、この心の味方は…この世で無…誰もいなくなった。

孤独の海に身を投じた私は…果たして、陸まで泳ぎ着くの?

岸辺には修二さんが…立っている気がする。

でも、まだ見えないの、ここは、何も見えない遠い遠い奥の沖だから……。

修二さん…私はあなたに辿り着けるんだろうか……。

泳いで泳いで…疲れて…溺れ死んでしまうかも知れない。


辿り着きたい、修二さんに……と魂が泣く。