キミは聞こえる

 簡単に言ってくれるが、無意識にやってしまうことをどうすれば防げるというのか。

 不意に肩を叩かれて、ぎくりと身を固くする。

「どしたの、泉。幽霊でも見たような顔して」
「千紗の目の下にすごいくまが出来てるせいだよ、でしょ?」

 話しかけてきたのは千紗と響子であった。

 息を整えつつ、二人の言葉を口の中でゆっくり復唱して何を言われたのかを理解する。

 たしかに友の顔には十歳も老け込んで見えるほどひどいクマが落ちていた。

「もうすぐミスコンでしょ……夜更かししたの?」
「それがね、お恥ずかしい話で、ママのお気にドラマ何気なく見てたら見事にはまっちゃってさぁ、オールナイト」

 えへへ、と笑う声の中にふあぁ、という欠伸が混じる。

 1時間目がHRで助かったぁ、と伸びをする千紗、寝る気満々か。

「それより泉、あんたどうかした?」
「え? なにが?」
「さっきすごい顔でプリントねじり上げてたから。なんか怖いオーラ出てた」
「うわっ、泉のプリントすごいことになってるよ!」

 見て響子、栗原さん! という千紗の声に、響子と、その後ろから佳乃がひょこっと顔をのぞかせて、泉のプリントねじり棒に目を見張る。

 千紗が持ち上げると、プリントは中ほどからくたらと折れ、力なくぷらぷら揺れた。

「ど、どうした泉マジで!」
「ど、どこか悪いの、代谷さん」

 心配する二人に、いや、逆に君たちがどうしたのだ、と泉は問いかけたかった。