キミは聞こえる

「てことは、千紗も知希さんも互いに好きなわけだ」
「……は?」

 なに言ってんの? という顔をされて、そっちこそなに言ってんの? という顔を返す。

「い、いや、そうはっきりとまではわかんないんだって。二人は幼馴染みで、誰が見ても仲のいい似合いのカップルだけど、あくまで友達。本心を知希に訊いても、なんかいっつもはぐらかされちゃうし」
「千紗は、知希さんが好きじゃないの?」
「さぁねぇ。ラブかライクか、あの二人はいつまで経ってもはっきりしないから」

 へぇ、と適当に相づちを打ちながら、どうやら自分と桐野の関係はすこしずれているようだと気づく。

 矢吹が言っているのは――

 両想いのようで両想いではない。友達だが、親友とは違う。

 しかし、とっても仲はいい、ということ。少なくとも、自分の気持ちを向こうは知らない。

 ならば、相手の本心を知りながらカップルという枠組みに収まらない泉たちの関係は何と呼ぶのだろう。

 ……友情通過、恋愛停滞?

 そんなことを考えながら田舎道を並んで進んでいると、向こうから、真っ黒のトレンチコートを腕に掛けたシンプルな装いの三十代と思しき男が歩いてきた。

 険しい顔つきでしきりに視線を巡らせている様子がふつうの観光客とどこか違うように感じられ、矢吹も同じ事を思ったのか、会話が途切れる。

 顔のパーツがはっきりと確認出来るほどの距離まで来た、そのとき。

 泉は思わず足を止めそうになった。


(な、なに…いまの)


 突如として凄まじい感情の波が泉を襲った。