キミは聞こえる

 ふと、恋人同士に見間違われたりしないだろうか、と心配になった。

 が、矢吹はまさに部活帰りの恰好で、泉はまるっきりの私服である。

 ここまで釣り合いが取れていないとさすがにデートとは思われまい。

 ただ、何故女物の買い物袋を持たされているのか、という若干の疑問が浮かぶかも知れないがまぁ、カップルにさえ思われなければなんでもいいか、

 と泉は実にあっけらかんとしている。


 荷物が減ったことが、思った以上に、とっても嬉しかったのである。


「そういえば」
「そういえば」

 見事に声が重なり、顔を見合わせるとどちらからともなく吹きだした。

「なに?」
「代谷さんからどうぞ」

 レディーファーストか。

 負ぶさってくれ、と保健室でいきなり膝をつけられたときは、思わずその背中を蹴飛ばしてやりたくなったが、

 さらりと荷物を持ってくれたこと、また、

 ――たまたまか意識的にかは知らないが――

 気づけば車道側を歩いてくれている点については、男性としてなかなかの高得点である。

 こほん、と軽く咳払いをして、この間だけど、とあらためて話し出す。

「矢吹くんのお母さんに会ったよ」
「母さんも言ってた。理事長のお孫さんにようやく会えた! って」
「はとこです。児相にお勤めなんだね」
「そ」
「将来は矢吹君も?」

 いやいや、と息子は首を振る。

「休みはねぇし、夜遅くまでかかる日もしょっちゅうだし、相手にすんのはすげぇ厄介なやつらばっかだし。ありゃあ相当心労溜まる仕事だと思う。女はともかく、俺には無理だわ」