キミは聞こえる


 試合が終了次第、各々勝手に帰宅せよという指示をもらっていた。

 勝敗を見届けると、泉は歓声が鳴りやまぬうちに会場を飛び出した。

 駆け出す直前、どこに行くの代谷さん、と佳乃に呼び止められたけれど、用事を思い出して、と適当に返事をして、スタンド席の間を足早に通り抜けた。

 試合直後の駐車場には、交通整備の者以外に人はなかった。

 敷地を抜け、コンクリートをひた走る。

 目指すは病院。


 友香の勤める病院に、いますぐ行かなければならなかった。

 
 泉は翔吾の病室にいた。

 面会は、おそらく矢吹の母ら児童相談所職員と看護士しか許されてはいないのだろう。

 あいかわらず殺風景な病室だと思った。

 外の人間が立ち寄った気配、痕跡がほとんどない。

 真黒なテレビに二つの顔が映っている。

 翔吾は相変わらずの無表情で、雲一つない夏空をぼんやりと見上げていた。

 泉は翔吾の真ん前に立っていた。もちろん、翔吾の目はちらりとも泉を気にしようとはしない。

 はじめからわかっていたため、別段傷つくこともなかった。

 鞄を床に置いても、翔吾はちっともこれという反応を示さない。

 ふいに窓の外から弾けるような掛け声が聞こえ、首を捻ると、空の下、サッカーを楽しむ中高校生くらいの男の子たちの姿が見えた。

 翔吾の病室のすぐ裏は、道路を一本挟んで公園になっていたのである。